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バックナンバー 螢光板
598号/2009. 11月号

 映画「私の中のあなた」を観た。物語は母親の強い意思によって、姉の命を救うためにドナーとして生まれた、という少女のショッキングなモノローグから始まる。家庭は両親と姉と兄との5人で、ごく普通に強い絆で結ばれていた。問題は姉が2歳の時から前骨髄性白血病との闘病中で、そのため妹は姉のため、これまで臍帯血や骨髄など様々な臓器を提供してきたが、今回の腎移植は拒否する、という。父親は黙って見守るだけである

 ▼少女は思い余って、「自分の身は自分で守りたい」と、貯めていたもの全部を持って弁護士のもとへ駆け込む、という展開。母親自身も弁護士であるが、長女の命を救うために、仕事も投げ打って盲進してきたので、よもや妹が拒絶するなどとは思ってもみなかった。少女は11歳になって初めて自分の将来を考えるようになり、大好きな姉のためであっても、腎臓提供は納得できないという心の葛藤に悩む

 ▼母性愛は理屈ではない。が、そのために一見、平静な家族のひとりひとりが深く苦悩する姿を克明に画いている。ここでは、白血病そのものの深刻さは避けており、むしろ同病者とのロマンスや少女たちの素晴らしい勇気で難病にも明るく、ユーモアを交えて立ち向かう姿に救われる。家族が、この少女の提訴を契機にして、命の尊さや儚さを真剣に考える。やがて長女もまた、家族崩壊の危うさのあることに気づき、これまで言いだせなかった本心を母へ語り、安らかな終焉を迎える。難病と取り組む医療の姿勢、さらには生命の尊厳と家族の絆の大切さを改めて教えられた。



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