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バックナンバー 螢光板
601号/2010. 3月号
 

 3次元映像で架空の美しい惑星パンドラを描いた映画「アバター」は、アカデミー賞では振るわなかったものの、全世界興行収入が史上最高額を記録した。米国では、この映画を見た後に「アバター鑑賞後うつ」と呼ばれる現象に陥った人達がいたそうである。「住人達が自然の中で平和に暮らす仮想世界に、3次元映像効果も手伝い一部の観客が強く同調し、現実世界との差に落ち込んでしまった現象」と解釈する専門家もいる。

 この話を聞き、我々の業界のとある現象を思った。中長期の海外出張(客員教員やポスドクとしての所謂留学)の後に日本の職場に復帰した際に見られる「落ち込み」がそれである。競争が激しい外国でも、研究室を率いる立場や性急な成果を求められる状況に置かれていなければ、平凡な留学においては行っていることの大半は自分自身の成果や研究診療能力の向上に直結している。一方、帰国後日本の職場に戻れば、自分の業績や能力向上には直結しない仕事を行う責任や義務がある。そのギャップに「落ち込む」訳である。これは何も、海外の環境が日本より素晴らしいということの反映ではなく、単に外国ではそれらの業務を行う責任を負わない仮の立場で居させてもらったことの反映なのだと思う。

 しかし最近は、この現象を味わえる人も減ってきているようである。周知のごとく大学の臨床医学系においては人員不足が極限に達している。さらに基礎・社会医学系も定員の約三分の一を他分野へ移譲したため、基礎、臨床を問わず中長期海外出張に出ることは以前にも増して困難な現状である。



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