バックナンバー 螢光板
656号/2015.9月号

健康診査などで、これまで数多くの「手」に出会った。大きい手、小さい手、温かい手、冷たい手そしてだらけの節くれだった職人の手等々。手はヒトが生きるための必須の道具でもあり、変形した手はこれまでの生活歴を無言で語ってくれる。ヒトの手には約5百万年前にチンパンジーとの共通の祖先から分かれて、独自の進化を遂げてきたという歴史が秘められている。二足歩行を選択して生存競争を生き抜いて進化してきたわけであるが、道具として進化してきた手指に負うところが大きいのでないか。27個の小骨が互いに連合して様々な目的に適応しているが視覚障碍者にとってはかけがえのない感覚器でもある。

駅や電車の中などでスマホを片手に、ひたすら親指を動かす若者を見かけるが今では珍しくない風景。総務省の調べではスマホの保有率が60%を超え、とくに20歳代では94%にもなるという。多くは片手で、小指で支えながら親指一本で操作するようであるが、長時間になると色々種々の障害が発生するようである。テキストサム損傷とよばれる親指の腱鞘炎もその一つであろう。

周囲では、ほとんどの家電製品がデジタル化しリモコンのボタン操作一つでオンオフが可能で、手指の出番が激減している。この50年ほどの間に算盤、計算尺や電卓などが引退を余儀なくされて、手指の器用さを競う機会は最早ないようだ。電カル時代では署名のほかには書字しないで済むという現場では、積極的に手の出番を多くすることで足腰と同様に頭脳に繋がる手を鍛えてみてはどうか。



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