バックナンバー 螢光板
666号/2016.9月号

医療現場では血圧測定は必須で、水銀式血圧計の場合は対話しながらマンシェットを巻き、まず脈をとり、聴診器を当ててコロトコフ音を聴きながら測定する。が、最近では電子血圧計の普及でスイッチのオン・オフですむ。「今日は少し高いね。念のためにもう一度」といった図式となる。

ところで、脈そのもの本態についてはハーヴェイの血液循環説まで待たなければならないが、その認識は紀元前1世紀の中国の医書{黄帝内経}まで遡ることが出来る。聴診器を用いた血圧測定はニコライ・コロトホフ(日露戦争当時)の考案で、その後80年ほどで広く家庭まで普及して、なんと百年以上の歴史がある。

わが国が環境先進国を目指して、水銀の管理を世界的に強化することを定めた「水銀に関する水俣条約・2013年」が批准され、これが4年後(2020年)には発効することになる。従って水銀を用いた機器の製造ならびに輸出入が原則禁止され、水銀式血圧計もこの中に入る。高血圧学会では「水俣条約などの社会環境の変化に鑑み、今後新規に水銀血圧計の導入を行わないことを推奨します。」との声明を出している。現在、一般家庭などの退蔵品を含めた水銀式血圧計の回収が進められている。老医にとっては水銀式血圧計が姿を消すことについては、とくに感慨深いものがある。

1日十万回もの心拍動に伴って、血圧値は刻々と変化する。それぞれの血圧値を測定し日内変動などが詳細に分析できる機器の開発に期待したい。また、非常の際にも電源や電池切れの心配のない精度の高い血圧計の確保もお願いしておきたい。



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