同窓新聞
第586号(2008年9月号)
2008.11.27
螢光板
8月20日、福島県立大野病院事件の無罪判決が下った。地裁の結論は現在の医療水準に照らして、手術そのものは標準的なもので過失はないとした。これは、医師の裁量権を広く認めたものである。人の生命は何ものにも変えがたいものであり、遺族の心情を思うと手放しで喜べないが、固唾を飲んで見守った関係者はほっとしているのではないか。
04年、帝王切開手術で女性を死亡させたとして執刀医が業務上過失致死罪に問われた事件で、主な争点は執刀医の行為を問うもので、とくに癒着胎盤の剥離操作が適切に行われたか否かにあった。また、その後の大量出血が予見できたか、その対応に問題がなかったかなどの死因と関係する点に集中した。
2年の歳月を要して14回の公判で結審したが、この間、日本産婦人科学会および全国医学部長会議などから本件に関しての声明が表明され、高い関心が寄せられていた。
関係者の間では「ある確率で起こる不可避な事態まで刑事責任を問われるなら医療は成り立たない」、という反発があり、産科関係の施設の閉院が相次ぎ、このままでは医療の崩壊は免れないとまでいわれていた。
発端は県の「医療事故調査委員会報告」をもとにしたもので、捜査段階で医師を逮捕、起訴した点にも問題があったのではないか。
医療には様々な危険が伴うもので、だからこそ事故の再発防止には原因究明が必須で、その結果を患者や家族が納得出来るように誠実に説明し、調査の結果から患者側の不信感を取り除き、安心安全の医療の実現が出来うる環境つくりこそが急務ではないか。
目次
1面
- 9月定例理事会
- 螢光板 医療の不確定性
- 我が学生時代 野上芳美
- 同窓会臨時総会通知
- 同窓会長ならびに監事の選挙について
2面
- 論壇 福島県立大野病院事件の示しているもの
- 夏季医学講座を終了して 龍 順之助
- シリーズ医療と訴訟(6)医療関係者の常識と講演後の質問 押田茂實
- 支部長・卒業年次代表者会のおしらせ
3面
- 学芸 心脳蘇生への先進的挑戦 長尾 健
- 顔 増田英樹教授(練馬光が丘病院外科)、石田 肇教授(練馬光が丘病院泌尿器)
4面
- 同窓会長室から(13) 櫻井 勇
- 蓮沼進君の死を悼む 有賀 徹
- 蓮沼先生の御逝去を悼む 角田和男
5面
- 医師は何を誰に説明すべきか(12) 鈴木喜六
- 医師に対する税務調査(3) 松田理明
- Around the World〜この時、世界は〜(2008年7、8月)
- 知っていますか?医学部史料室(94):ロキタンスキー 宮川美知子(59回生)
- 日本大学医学部の礎を築いた人々 山本隆充
6面
- 内視鏡下胆嚢摘出術余話(2) 田中 隆
- 台湾と日本 中川滋木
- 「春風駘蕩」-岸本孝先生のこと- 野口幸啓
7面
- 上半身肥満 星野和男
- 同窓会だより 本庄市児玉郡医師会日大会、千葉県支部総会、広島県支部総会
8面
- 同窓会だより 山岳部総会、高知県支部総会、日大医学部日大三高