同窓新聞

第604号(2010年6月号)

2010.09.24

螢光板

アンチエイジングという言葉にしばしば出会う。この言葉に出会うたびに何となく違和感を感じている。人は1年の時を経れば1年老化する。生物・生命の世界に「絶対」があるとすればこのこと以外にない。そんな摂理の中でのアンチエイジング。生物としての変化をゆっくりに、あるいは止めようというのか。精神の在りようを言っているのか。容貌のことを言っているのか。「時」に逆らってその代謝や構造を維持しようとする多くの補充療法。美容整形でシワを伸ばすことまでアンチエイジング、かつらの宣伝にまでアンチエイジング。すぐそこに民間療法営業部と民間信仰団体が待っているような気がする。
恐れることは、ものすごい勢いで高齢化が進む社会にあって、必ず訪れる「老化=エイジング」に対する心の準備をこのアンチエイジングなる言葉は麻酔してしまうのではないかということである。
臨床の現場にいると、多くの方にこの「エイジング」に対する心の備えが失われており、それに端を発するトラブルがいかに多いかを実感する。無限に拡大する国民の健康願望は、実は現代日本の医療の問題の根幹であり、それはどうもアンチエイジングという表現と隣り合わせのように思われる。いつまでも若くいたい、いつまでも健康でいたいというアンチエイジング願望は、いつの間にか死に対するリアリティの喪失という現象を形づくっている。歳とともに増す見識、経験に裏打ちされた言動、エイジングによってしか得られない美徳、というようなものは間違いなく存在すると思うのだが。

目次

1面

  • 関連病院・同窓会学術集談会開催 大道 久
  • 我が学生時代 川端眞人(47回生)
  • 原中勝征先生(39回生)日本医師会会長就任祝賀会ご案内
  • 日本大学医学部同窓会・同窓交流会 参加募集のおしらせ
  • 螢光板

2面

  • 論壇 N.ブランドの医療文化創出を目指して
  • 6月定例理事会
  • 白石信尚名誉教授を偲んで 浅井 亨(41回生)
  • 同窓会60周年記念医学奨励基金研究助成金受領候補者募集

3面

  • 消化器外科の肝がん手術数が全国第1位に! 岡野匡雄(43回生)
  • 学芸 iPS細胞に対する期待-その光と影- 松本太郎(60回生)

4面

  • 同窓会長室から(21) 岡野匡雄(43回生)
  • 知っていますか?医学部史料室(111) 宮川美知子(59回生)
  • 落語に学ぶ雑学(6)身体編 題目:半分垢 部位:垢(あか) 佐藤公望(48回生)
  • 日本大学医学部附属練馬光が丘病院 一般外来診療担当医表

5面

  • 瀨在幸安先生へのロシア友好勲章伝達式 中川滋木(37回生)
  • Around the World〜この時、世界は〜(2010年5月)
  • 第53回東日本医科学生総合体育大会 会場及び競技日程

6面

  • 若い人たちにお薦めする3冊の本 増田英樹(50回生)
  • 腹話術人形太郎の日々 松岡豊治(21回生)
  • 同窓会だより 柔道部部長交代の会