同窓新聞
第612号(2011年4月号)
2011.06.22
螢光板
後輩が内科部長を務める病院を訪問した。昔同じ病院にいたが入れ違いで、診療や症例検討会で同席するのは初めてだ。
良いとはいえぬ立地条件ながらそこは先進的運営と教育で名高い。旧弊な人からはやっかみ半分の批判もあり、実際はどうだろうかと興味津々で行った。
彼は研修後程なく渡米して修業を重ね、腫瘍内科医として確固たる地位を得てNIHの研究費も取り活躍しており、今般懇願されるまで日本に戻る気はなかったという。
15年ぶりの再会だがその飄々とした雰囲気と人懐っこい笑顔は昔のままだ。精巣腫瘍の米国人の診察に居合わせたが短時間で要領良く柔和な説明は見事であった。
症例検討会は、山のようなフィルムを運び出し「シャウカステン」にもたもたかけていた頃とは隔世の感で、全画像と検査所見が瞬時に画面に呼び起され、腫瘍の浸潤さえも時系列で動画で追える。
しかし私が最も感銘を受けたのは電子環境ではなくて、彼の臨床眼である。
膨大なデータを一瞬で把握して彼が矢継ぎ早に担当医に言うには「この人、元気?ご飯は食べてる?それならもうワンクールだ」「家は遠い?じゃあすぐ1回帰してあげて」。
数秒で患者の病状と生活と人柄を把握し、予後を見抜いて方針をてきぱき立てる。若手にはぴんと来なくても、これが出来るまでには年余の猛烈な修錬と試行錯誤と精進が要る。
良い話のない昨今、稀な清々しい感動だった。わが母校はここに一人の辣腕の臨床医=教育者を輩出し、彼は素知らぬ顔で淡々と練達の診療をし後進を育てている。これ以上の幸せと誇りはない。
目次
1面
- 平成23年度 大学院医学研究科・医学部開講式
- 我が学生時代 佐藤安男(47回生)
- 「同窓生災害支援募金」のお願い 岡野匡雄(43回生)
- 螢光板
2面
- 論壇 震災がもたらしたもの
- 新入生を迎えて 岡野匡雄(43回生)
- 新入生を迎えて 片山容一(47回生)
- 平成23年度 新入生名簿
3面
- 4月定例理事会
- 医学部と同窓会の懇談会 岡野匡雄(43回生)
- アンサング・ヒーロー(unsung hero)第3回 野口幸啓(53回生)
- 日本大学医学部同窓会・同窓交流会 参加募集のおしらせ
4面
- 第105回 医師国家試験成績速報 森山光彦(54回生)
- 60周年記念文庫(76) 西成田 進(46回生)
5面
- 最終講義 石川紘一教授 (薬理学分野) 浅井 聰(59回生)
- 日本大学医学会・日本大学医師会 定期総会 プログラム
- 第504回 日大医学会例会プログラム(第25回 関連病院 同窓会学術集談会)
6面
- 同窓会推薦講演 桑名 斉 社会福祉法人信愛報恩会 信愛病院院長(43回生)、吉澤孝之 医療法人社団愛語会 要町病院院長(56回生)
- 落語に学ぶ雑学(9) 佐藤公望(48回生)
7面
- 田中 隆先生を偲ぶ 鈴木佑典(26回生)
- 記念誌とクラス旅行 菊池恭三(26回生)
- 哀悼 田中 隆先生からのはがき 勝呂 長(28回生)
- 元第三外科教授 田中 隆君を偲ぶ 神森真一郎(26回生)
8面
- 医学部長室から(23) 片山容一(47回生)
- 知っていますか?医学部史料室(119) 宮川美知子(59回生)
- 最終講義 日本大学医学部付属練馬光が丘病院整形外科 教授 大幸俊三(43回生)
9面
- 日本冠疾患学会で2年連続最優秀賞受賞 瀬在 明(64回生)
- Around the World〜この時、世界は〜(2011年3月)
- 若い人たちにお薦めする3冊の本 山本隆充(49回生)
- 日本大学医学部附属板橋病院 外来診療担当医表
10面
- 碧井 猛著「分子生物学を巡る巨人」 中川滋木(37回生)
- 患者のための外来診察ポイント 竹内東太郎(45回生)
- 日本大学醫學部學友會雑誌(その1) 西成田 進(46回生)
- 日本大學醫學部學友会雑誌に触れる機会を得て 櫻井 勇(32回生)