同窓新聞
第683号(2018年5月号)
2018.06.29
螢光板
『夏も近づく八十八夜〜』。「八十八夜」は立春から数えて88日目のことで、今年は5月2日だった。この日を境に気候が安定してくるため、農作業を始めることができる縁起の良い日だった。そのため、この時期に摘んだお茶は美味しいだけでなく縁起物とされる。
晴れ渡った5月の連休中に近江で茶摘み体験をした。整然と連なるかまぼこ型の畝が美しい緑に染まっていた。お茶の木をかまぼこ型に刈り込むのは、木全体に均一に日光を当て、味や成分にムラが出ないようにする工夫だという。茶摘みのコツは一芯二葉(いっしんによう)といい、茎の先端にある新芽(芯)の部分とすぐ下にある二枚の若葉をやさしく引くように摘む。柔らかい新芽の裏側には毛茸(もうじ)と呼ばれる葉を守るためのうぶ毛がある。新茶を淹れた際にホコリのようなものが浮ぶのを見たことがないだろうか。その正体が毛茸だ。
そういえば、最近は「茶柱」に出会う機会がめっきり減った感じがしていた。茶園の主人に聞くと玉露や煎茶のような上質なお茶が好まれるようになり、茶茎の入った茶葉を使用する機会が減少したためだそうだ。その昔に茶葉を売る商人は、茶茎が多くて質が劣る二番茶を売りさばくために「茶柱が立ったら縁起が良い」と吹聴して売ったとか。縁起物とされる茶柱を見かけないのはさびしい気がするが、今日では『必ず茶柱が立つ』というカプセル入りのお茶まで売られている。ペットボトルやティーバッグのお茶は手軽でよいが、この時期は急須で淹れた新茶をゆったり楽しみたい。