同窓新聞
第686号(2018年9月号)
2018.10.31
螢光板
この2、3年だろうか、「世の中の底が抜けてしまった」と言って世を嘆く人をよく見かけるようになった。そうは無かったことだと思う。靴の底や鍋の底は簡単には抜けなくなった。「夜の底が白くなった」のは私が生まれる前のことだし。
厚労省局長だった村木厚子さんは2009年6月のある日曜日、呼び出されて向かった大阪地検特捜部に逮捕された。「郵便不正事件」である。半年近く勾留され、翌年の判決では無罪となったが、その直後朝日新聞のスクープが出て検察が立件の誘惑に負けて証拠の改竄を行っていたことが明らかになった。事実翌月には担当検事だった大坪弘道、佐賀元明、前田恒彦が懲戒免職処分となり2012年3月にはこれら3名の有罪が確定した。この年を、記して「改竄元年」としたい。
その後無事復職し事務次官まで務められた村木さんは今年8月、「日本型組織の病を考える」(角川新書)を上梓された。詳しくは本を手にとっていただくとして、緒言で著者は最近次々に起きた不祥事を挙げている。鉄鋼メーカー(筆者注・神戸製鋼)の鋼材品質データ(同4年)、自動車メーカー(同注・株式会社SUBARU)の品質検査(同5年)、官僚(同注・財務省)の公文書(同5年)など。本学の運動部も実名で俎上に挙げられている。
著者は言う。これらの事件にある共通の背景として「極めて同質性の高い組織」の「強みが発揮された成功体験が今は弱点となっている」
彼女が入省時にはキャリア組のうち女性は3%に満たなかったそうだ。「同質性」の危険を知る人だと思う。(y)