同窓新聞

第687号(2018年10月号)

2018.11.30

螢光板

大分以前、同窓新聞に「酒飲みの照れ、たばこ吸いの居直り、糖尿病の嘘つき」という駄文を書いたことがある。外来・健診の現場で患者さんに病歴や生活歴を問うた時の反応の類型である。アルコール性肝障害の方は酒量を過少に申告し、糖尿病の患者さんは間食・果物摂取を過少に申告し、喫煙者はたばこの本数を比較的正直に申告する一般的傾向を少し揶揄して書いたものである。この記事を書いた頃は「分煙」が世の中の常識の水準であった。その後、禁煙の流れは完全室内禁煙、敷地内禁煙、区内禁煙、そして世界的には国中禁煙に達している。ならばたばこの生産・販売を中止するかと言えば、これがまた―。幾分か喫煙者に同情を禁じ得ないところである。さて今や準犯罪者の扱いを受ける喫煙者たち。家では奥さんと子供からの白い眼と無言のプレッシャー、会社では敷地の隅っこで一人「立ち吸い」

さて健診票の最初のページ。タバコを吸いますか(○)(1日20本位)とある。「やっぱりたばこは止めた方が―」「そうですね、止めようとは思っているんですが―」、というよくある会話。最近気がついたこと、それはこの会話の「そうですね―」の前に受診者のほとんどは「照れ笑い」を入れる。いたずらっ子がいたずらを見つかってしまった時の表情に似ている。いま「たばこ吸い」から「居直り」は消え、酒同様に、止めたくても止められない方々の「照れ」に変化してきたようだ。

本年の喫煙歴の最高は「1日65本」であった。私はこの方に「指導」をしそびれた。この種の頑強な抵抗者には相応の哲学があるんだろうな。