同窓新聞

第693号(2019年5月号)

2019.06.28

螢光板

平成が終わり新しい元号が始まる。平成の三十年間に社会を変化させた最大の要因を一つ上げるとすれば科学技術、特に情報解析技術の進歩であろう。先日発表されたブラックホールの映像化が、平成の最後に発表されたことには何か象徴的なものを感じた。

この進歩を医学の立場から見てみるとゲノム情報の解析技術が上げられ、医療への応用が始められようとしている。ゲノム情報から疾病を特定し、さらに治療へと応用しようとするものであり、実現すれば医者のいらない時代が来るのかもしれないと世間では考えている節がある。果たしてそうだろうか。

先日古くからの友達と話す機会があった。彼が言うにはある診断で治療を受けたのだが直らない。そればかりか副作用で体調が優れない。そして「医者ってこんなものか。遺伝子解析が進んだら、医者なんかいらなくなるよな」と言う。勿論友達同士の冗談を交えた会話の中でのことである。しかし、この言葉に次の時代への重要な鍵が含まれているような気がした。

遺伝子の塩基配列を解析することは、装置さえあれば簡単にできる。しかし見つかった配列の異常を、病気と結びつけることは容易ではない。同じ診断名を付けても病気自体が同じであるかどうかは判断できない。事実、同じ診断名で同じ治療を行っても、効果が同じになるとは限らない。そこでの判断は医師の重要な「技術」である。ここに必要となるのはコンピュータではなく、医師の洞察力である。情報の解析が高度になっても、医療には医師は欠かせない。令和になっても研鑽の日々は続く。

目次

1面

  • 5月定例理事会
  • 我が学生時代 松川公一(51回生)
  • 令和元年 日本大学医学部同窓会・同窓交流会のご案内(第一報)
  • 蛍光板

2面 

  • 学務担当に就任して 救急医学系 救急集中治療医学分野教授 木下浩作(60回生)
  • 卒後教育担当に就任して 日本大学病院消化器病センター長 消化器内科教授 後藤田卓志(東京医科大学 平成4年卒)
  • 論壇 10連休から考える働き方改革
  • 医学部同窓会ホームページにアクセス下さい!

3面 

  • 板橋病院長就任挨拶 消化器肝臓内科 教授 森山光彦(54回生)
  • 副会長就任挨拶 日本大学医学部脳神経外科学系 神経外科学分野 平山晃康(54回生)
  • 渉外担当理事に就任して 日本大学病院 循環器病センター 心臓血管外科 秦 光賢(63回生)
  • 三木敏生 教授 生体機能系生理学分野(生体機能系生理学分野 医局長 高尾恭一)
  • 学芸 インフルエンザ脳症の診療戦略 日本大学医学部小児科学系小児科学分野(日本大学病院総合診療センター小児科 科長)診療教授 渕上達夫(53回生)

4面 

  • 雑感 「懐古」小池昭夫(41回生)
  • Around the World (2019年4月)~この時、世界は~
  • クラス名考 「翠志会」昭和56年卒 平野仁志(54回生)
  • Q&Aコーナ

5面 

  • 知っていますか?医学部史料室(200) 新聞担当理事 宮川美知子(59回生)

  • 税を考える(37)「個人医院か医療法人か、今の時代背景を考えると」 公認会計士 税理士 松田理明

  • 今、学生は…(63) ME研究会主将 柳 佳輝

  • 第6回 名士講演会「新渡戸稲造」昭和5年12月(第一講堂にて)ー学友会雑誌からー 医学部100周年史編纂作業部会 西成田 進(46回生)

     

6面 

  • 同窓会だより
  • 埼玉県支部総会・新年会