同窓新聞

第704号(2020年6月号)

2020.07.31

螢光板

店先に黄色く熟した梅が並び始めた。梅の歴史は古く、中国では3000年以上も前から燻製にした青梅が薬として用いられていた。日本に伝わった当時は貴族たちの間で観賞用として広まり、梅の花を囲んでの酒宴が催された。「令和」の典拠である万葉集「梅花の宴」はこうした場面を詠んだものだった。初めて梅が「梅干し」として書物に現れるのは平安時代。日本最古の医学書『医心方』に梅干しの効能についての記述がある。平安時代に都で疫病が流行した際には、病に臥した村上天皇が梅干しを食べて回復したと言われている。戦国時代には兵糧食としてだけではなく、傷の消毒や食中毒、伝染病の予防としても重宝された。その後も梅干しは病気や災難から身を守ってくれる万能薬と信じられてきた。梅干しは梅と粗塩さえあればできるが、重要なのはその配分。塩が多ければ保存性は高まるが、塩辛くなり、逆に梅が多いと酸っぱくなる。保存性と味の絶妙なバランスこそが「塩梅」(あんばい)。梅をつけて数日して「いい塩梅」に梅のエキスが出始めると、あたりに芳醇な香りが漂ってなんともいえない豊かな空間となる。梅干しは梅雨が明けたころ天日に干して完成する。梅雨という「陰」の時期に採れた梅が日に当たり「陽」に変わる。干し上がったばかりの梅干しは塩辛く感じるが、二年、三年と熟成させると塩角がとれ、旨味が増してまろやかな味わいに変化するから不思議だ。梅雨の鬱々としがちなこの時期は、梅雨明けの天日干しのタイミングを待ちながら梅仕事をするのも悪くない。

目次

1面

  • 新キャンパスへの道 (7)板橋新キャンパス・プロポーザル 医学部長 高山忠利(53回生)

  • 我が学生時代 櫻 林 郁之介(41回生)
  • 令和2年 春の叙勲者
  • 螢光板

2面 

  • 日本大学医師会学術奨励賞授与式挙行 日本大学医師会会長 武井正美

  • ペニシリンの和名、「碧素」とその開発への取り組み 中川滋木(37回生)

  • 論壇「テレワークとその周辺」

3面 

  • 緊急事態宣言を受けて~医学部遠隔授業の取り組み~ 学務担当 木下浩作(60回生)

  • ワクチンによる感染症予防の大切さ―COVID19を念頭に― 医療法人自然堂峯小児科理事長 峯 眞人(50回生)

  • 学芸 圧迫性脊髄症の診断―中枢運動伝導時間計測による皮質脊髄路機能の定量評価― 日本大学医学部整形外科学系整形外科学分野 主任教授 中西一義(67回生)

4面 

  • 齋木 実先生(69回生)埼玉医科大学国際医療センター総合診療内科(地域医療科)教授に就任(日本大学医学部機能形態学系生体構造医学分野 原田智紀・71回生)

  • 学友会雑誌から(15)「落成セル板橋新校舎」―学友会雑誌第19号から― 医学部創設100周年記念誌編纂作業部会 西成田 進(46回生)

  • 診療こぼればなし 神山 浩(65回生)

  • 「同窓会長室から」(55)新型コロナウイルス 会長 梶原 優(45回生)

5面 

  • 学会のWEB開催を主催して 日本大学医学部視覚科学系眼科学分野主任教授 山上 聡

  • 落語に学ぶ雑学(49)佐藤公望 薬、治療編 題目 目薬 薬 目薬(48回生)

6面 

  • 心に残っている患者さん 早川眞人(早川眼科医院・41回生)

  • 心に残っている患者さん 櫻 林 郁之介(自治医科大学 名誉教授・41回生)

  • 理事会報告事項

  • Around the World(2020年5月)~この時、世界は~

7面 

  • 知っていますか?医学部史料室(211)新聞担当理事 宮川美知子(59回生)
  • 同窓会だより

  • 第3回静岡県人会開催

  • 今、学生は…(72)陸上競技部主将 野崎秀偉(4年生)

  • Q&Aコーナー

8面 

  • 悟医会(第51回生)同窓会開催