同窓新聞

第706号(2020年9月号)

2020.10.30

螢光板

やく百年前、ソ連の作曲家プロコフィエフは図らずも2か月間日本に滞在することになった。ロシア革命の翌年、「計略と流血」のため満足に「演奏会も行えなく」なっていた27歳は故国を厭離して合衆国を目指した。

1918年5月7日、2年前に全線開通した鉄道でモスクワから旅が始まる。国際列車(1914~)はウラジオストクから定期船(1902~)で航送され31日に敦賀港に入り、翌1日朝5時に東京駅に着いた。直ちに彼は「駅の上にあるとてもいい、洒落た」ステーションホテル(1915~)に宿をとった。しかし、大問題が明らかになる。乗る予定のチリに向かう船は3日前に出航していた。

次便は2か月後。この間に東京、横浜で3回の演奏会を行っている。彼の感想は辛辣である。「日本の聴衆が興味を示すのは派手な技巧やうわべの面白さだけで、本質は理解しない」そして8月2日晴れて離日し9月ニューヨークに達した。

「アメリカでは、自国が生んだ作曲家が存在しないため関心はすべて演奏自体に終始していた」「母国では丸一世紀の間、作曲家は常に新しい音楽を書き聴衆に解くべき新しい問題を提供して熱のこもった論争を巻き起こしてきた」「私はこの国に来るのが早過ぎた」20世紀を代表する楽曲、ピアノ協奏曲第3番は1921年シカゴで初演された。しかし聴衆に火を付けることはできなかった。批評家は言う「ひとつの未来図だが雑音で出来上がっている」

今は無理でも諸君はいずれ理解するであろう、と捨て台詞を残して天才は4年後に合衆国を去っている。

目次

1面

  • 新キャンパスへの道(9)新医学部・病院 工事プロセス 医学部長 高山忠利(53回生)

  • 日本大学・専任副学長の就任にあたって 医学部長 高山忠利(53回生)

  • 『令和2年7月豪雨災害』同窓会員の皆様へ

  • 同窓会臨時総会告示

  • 螢光板

2面 

  • 心に残っている患者さん 丸山 公(52回生)

  • 我が学生時代 宮本俊雄(41回生)
  • 学友会雑誌から(17)-駿河台から板橋へ- 医学部創設100周年記念誌編纂作業部会 西成田 進(46回生)

3面 

  • 9月定例理事会

  • 論壇「パンデミックと美術」

4面 

  • 選挙管理委員会から

  • ふと思うこと 脳神経外科学系神経外科学分野教授 吉野篤緒(59回生)

5面 

  • 臨時総会資料

6面 

  • Around the World(2020年7、8月)~この時、世界は~

  • 落語に学ぶ雑学(50)佐藤公望(48回生)食物編 題目 長崎の赤飯 食材 赤飯

7面 

  • 税を考える(41)家賃支援給付金について 公認会計士 松田理明

  • 今、学生は…(74)美術部主将 櫻井章尚(3年生)

8面 

  • 送られてきたうれしい書物 中川滋木(37回生)

  • 新型コロナウイルス肺炎で入院して! 同窓会顧問 岡野匡雄(43回生)

  • 黄斑円孔の早期発見と眼内レンズの落下の体験 あいそ内科 林 洋一(41回生)

  • 雑感 日本大学病院循環器内科 准教授 飯田 圭(68回生)

  • 落語に学ぶ雑学(51)佐藤公望(48回生)身体編 題目 目から鼻 部位 涙管(涙管、涙)
  • 知っていますか?医学部史料室(212)新聞担当理事 宮川美知子(59回生)

9面 

  • 知っていますか?医学部史料室(213)~J.C.Hepburn(1)~新聞担当理事 宮川美知子(59回生)
  • 新しい機序の不眠症治療薬 精神医学系精神医学分野 教授 鈴木正泰(75回生)

  • 同窓会だより
  • 世田谷支部(桜世会)総会開催 京王プラザホテルにて

  • 櫻二会 第12回総会開催

10面 

  • 日本大学医学部同窓会栃木県支部令和元年度総会及び懇親会
  • 我が学生時代 林 洋一(あいそ内科・41回生)